新START失効の瀬戸際──米ロ核軍備管理はどこへ向かうのか~「新START失効?上等じゃあっ!」なプーチンさんのLINEスタンプ

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このスタンプには多少語弊がある。

新STARTの執行を喜んでいるのはむしろトランプ氏の方で、ロシア側は「もう一年延長しようよ」と持ち掛けていたらしい。

だが、必死に核量産を進める中国を条約に入れたい、とトランプ氏側が言っているだの、「核軍縮をすすめましょう」と中国が言っているだの、出演者全員が自分のセリフを間違えているかのような混沌に陥っている。

冷戦異常に危ない奴らが大国を牛耳っている2026年、どんな年になるのだろうか?

先が思いやられる。

新START失効の瀬戸際──米ロ核軍備管理はどこへ向かうのか

はじめに

米国とロシアの間で唯一残されてきた戦略核兵器管理の枠組みである新START(新戦略兵器削減条約)が、事実上の機能停止から完全失効へと向かおうとしている。冷戦後の核軍縮体制の「最後の柱」とも言われてきた同条約の崩壊は、単なる二国間問題にとどまらず、国際安全保障秩序全体に深刻な影響を及ぼす可能性が高い。

本稿では、新STARTがどのような経緯で現在の状況に至ったのかを整理したうえで、失効が米ロ双方にもたらす軍事的・政治的・戦略的影響を、世界各国の報道や専門家の分析を踏まえつつ読み解く。あわせて、今後想定されるシナリオと国際社会への波及効果についても論じる。

新START条約とは何か

新STARTは2010年に米露両国が署名し、2011年に発効した戦略核兵器削減条約である。配備戦略核弾頭数をそれぞれ1550発以内、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、戦略爆撃機の配備数を700基以内に制限することを柱としてきた。

同条約の最大の特徴は、厳格な相互査察とデータ交換制度にある。これにより米ロ双方は相手の核戦力の規模や動向を比較的正確に把握でき、最悪の誤算を防ぐ安全弁として機能してきた。冷戦期のような全面的な核軍拡競争を抑制してきた点で、新STARTは象徴的な意味合いを持つ。

事実上の崩壊に至った背景

ロシアはウクライナ侵攻以降、新STARTの履行停止を宣言し、米国側の査察受け入れを拒否してきた。一方、米国もロシアの不履行を理由に、条約がもはや実効性を失っているとの立場を強めている。

背景には、単なるウクライナ戦争だけではなく、より構造的な要因が存在する。第一に、米ロ関係そのものが冷戦終結後で最悪とも言える水準まで悪化している点である。第二に、中国の核戦力増強を含む多極化した核環境が、米ロ二国間条約という枠組み自体を時代遅れにしつつある点である。

ロシア側は「米国が同盟国を通じてロシアの安全保障を脅かしている」と主張し、米国側は「ロシアが国際秩序を武力で変更しようとしている」と非難する。こうした相互不信が、軍備管理の余地を急速に狭めている。

新START失効が米国にもたらす影響

核戦力運用の自由度拡大

新STARTが完全に失効すれば、米国は配備核弾頭数や運搬手段の制約から解放される。理論上は、既存のミサイルや爆撃機により多くの弾頭を搭載することが可能となり、抑止力を数量的に強化できる。

しかし、多くの米メディアや専門家は、これを「自動的なメリット」とは見ていない。米国はすでに高度な核戦力を維持しており、単純な数の増加が安全保障を高めるとは限らないからである。むしろ問題は、相手の戦力を把握できなくなる不確実性の増大にある。

情報不足と誤算リスクの増大

査察制度が消滅すれば、米国はロシアの核戦力に関する正確な情報を失う。衛星や情報機関による分析は可能だが、条約に基づく現地査察ほどの透明性は確保できない。

この情報不足は、危機時の判断を誤らせるリスクを高める。米国の戦略コミュニティでは、「最悪の事態を想定せざるを得なくなる」ことで、より強硬な軍事計画が採用される可能性が指摘されている。

国内政治への影響

新START失効は、米国内でも軍拡派と軍縮派の対立を再燃させる。共和党内には以前から条約に懐疑的な声が強く、失効を機に核戦力増強を主張する動きが活発化する可能性がある。一方、民主党や専門家の間では、軍拡競争のコストとリスクを懸念する声が根強い。

新START失効がロシアにもたらす影響

戦略的柔軟性の獲得とその限界

ロシアにとっても、新START失効は理論上、核戦力を制約なく拡張できる余地を意味する。特に極超音速兵器や新型ICBMといった分野で、技術的優位性を誇示する材料となり得る。

しかし、ロシア経済は制裁下にあり、無制限の軍拡を支える余力は乏しいとの見方が多い。欧州メディアでは、「ロシアは政治的には強硬姿勢を示せても、実際の増強には制約がある」とする分析が目立つ。

対米交渉カードとしての核

ロシアにとって核戦力は、依然として米国と対等であることを示す最大のカードである。新START失効後も、核を交渉材料として用い、将来的な包括的交渉に持ち込もうとする可能性が高い。

一方で、条約が存在しない状況では、交渉の出発点そのものが失われる。結果として、ロシア自身も長期的には戦略的安定性を損なうリスクを抱え込むことになる。

国内向けプロパガンダ効果

新STARTからの離脱姿勢は、ロシア国内では「主権と安全を守る強い国家」というイメージを強化する。国営メディアは、米国との対立を正当化する材料として条約問題を利用してきた。しかし、これは短期的な政治効果にとどまり、実質的な安全保障の改善につながるかは疑問である。

米ロ双方に共通する不利益

新START失効がもたらす最大の問題は、米ロ双方にとって「予測可能性」が失われる点にある。核抑止は、相手の能力と意図をある程度理解していることが前提となる。その基盤が崩れれば、抑止は不安定化する。

また、軍備管理の枠組みが消えることで、第三国、特に中国の核戦略にも影響が及ぶ。中国はこれまで米ロ間の軍縮を横目に、比較的自由に核戦力を拡大してきた。米ロが再び軍拡競争に入れば、中国を含む多極的な核競争が本格化する可能性がある。

国際社会への波及効果

欧州諸国は、新START失効を強い懸念をもって受け止めている。欧州は地理的に米ロ核対立の最前線に位置し、戦略的不安定化の影響を直接受けるからである。

また、核不拡散条約(NPT)体制にも悪影響が及ぶ。核兵器国が軍縮義務を果たしていないとの不満は、非核兵器国の間で高まっており、NPT体制の正当性が揺らぐ恐れがある。

今後考えられるシナリオ

第一のシナリオは、完全な軍拡競争への回帰である。条約なき状態が長期化すれば、米ロは最悪の想定に基づき戦力を増強する可能性がある。

第二のシナリオは、非公式な自制の継続である。条約は失効しても、実質的には現状水準を維持するという暗黙の了解が成立する可能性も否定できない。

第三のシナリオは、新たな枠組みへの移行である。中国を含む多国間軍備管理の議論が進む可能性もあるが、現時点ではハードルは極めて高い。

おわりに

新STARTの失効は、米ロ双方にとって一時的な自由度をもたらす一方で、長期的には不確実性とリスクを増大させる。核軍縮の象徴的枠組みが消えることは、国際秩序全体にとっても重大な後退である。

世界各国の報道が共通して指摘するのは、「勝者のいない結末」であるという点だ。米ロいずれにとっても、新START失効は戦略的安定を損なう賭けであり、その代償は国際社会全体が負うことになる。

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