「レーダー照射が何を意味するか」「なぜそれが問題なのか」について解説 ~『なにしてくれてんねんっ!』な小泉進次郎さんのLINEスタンプ
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小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「深く憂慮」 中国は反論
わたしには「レーダー照射」が何を意味しているのかいまいちピンと来なかったのでちょっと調べてみた。
以下、最近問題となっている「中国軍戦闘機による自衛隊機へのレーダー照射」をめぐる論点について、「レーダー照射が何を意味するか」「なぜそれが問題なのか」を詳しく解説し、さらに過去に 韓国海軍(ROK Navy)が 海上自衛隊(MSDF)の航空機に同様の照射を行った例をあげて、読者にとって分かりやすいように整理する。
目次
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レーダー照射とは何か
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「レーダー」の種類 — 捜索用レーダーと「火器管制レーダー」
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なぜ「照射」は脅威とみなされるのか
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なぜ「レーダー照射」は問題となるのか
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軍事的・安全保障上のリスク
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国際的な規範との関係
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2025年12月の中国軍機による自衛隊機への照射 ― 事実経過と日本政府の反応
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類似の前例 ― 2018年の韓国海軍による自衛隊機への照射事案
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なぜ両国事案が大きな波紋を呼ぶのか
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結び ― レーダー照射問題の意味と今後
1. レーダー照射とは何か
1-1. 「レーダー」の種類 — 捜索用レーダーと「火器管制レーダー」
「レーダー」と聞くと、空や海で他機・他艦の位置を探知するための電波装置をイメージする人が多いだろう。しかし、軍用レーダーには用途ごとに異なる種類があり、特に重要なのが以下の区別である。
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捜索用レーダー(サーチレーダー):広い範囲をスキャンし、目標の存在を検知するためのレーダー。初期探知・警戒監視に用いられる。
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火器管制レーダー(Fire-Control Radar, FCR):目標を精密に追尾(トラッキング)し、その距離・速度・高度などを測定するためのレーダー。ミサイルや砲弾を正確に目標に命中させるために不可欠なものである。 ウィキペディア+2イミダス+2
火器管制レーダーが向けられた状態、いわゆる「ロックオン」は、単なる探知や監視を超えて、攻撃の直前段階を意味する。つまり、捜索用レーダーに対する「レーダー照射」は通常の探知・監視行動であり得るが、火器管制レーダーによる「照射」は、相手に対して「攻撃準備を開始した」「標的と認識した」という強烈なメッセージとなる。 エンペディア+2イミダス+2
1-2. なぜ「照射」は脅威とみなされるのか
火器管制レーダーは、ミサイルや砲弾で命中精度を上げるための「射撃指揮(Fire Control)」に用いられる装置である。そのため、これを特定の空域の他機に向けるという行為は、攻撃の意思あるいは能力を示す行動と受け止められやすい。 イミダス+2navgunschl.sakura.ne.jp+2
実際に、火器管制レーダーによる追尾(ロックオン)は、世界的にも「敵対行為」「武力による威嚇」に準ずるものとみなされるのが一般的である。たとえ実弾の発射に至らなくとも、被照射側が回避(逃避)行動を余儀なくされる可能性があり、誤解や偶発的衝突、あるいは戦闘への発展につながりかねない危険な行為だ。 防衛省+2日本戦略研究フォーラム+2
また、技術的な点からも、火器管制レーダーは高出力・狭ビームの電波を使い、目標の精密情報(方位、距離、速度、迎撃に必要なドップラー情報など)を得るものであり、これを受けた側は音(レーダー警報受信機=RWR など)や機器の反応で「ロックされた」ことを即座に把握できる。これにより、受け手側に強い心理的/物理的圧力を与える。 防衛省+1
2. なぜ「レーダー照射」は問題となるのか
2-1. 軍事的・安全保障上のリスク
火器管制レーダー照射は、「標的:自衛隊機」という明確なメッセージである。以下のような軍事的・安全保障上のリスクを孕んでいる。
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偶発的衝突や誤射の危険性:意図せぬタイミングで回避行動が起きたり、誤認識が戦闘に発展する可能性がある。
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エスカレーション(段階的軍事衝突):レーダー照射 ⇒ 警告・回避 ⇒ それでも継続 ⇒ 相互にミサイル搭載・緊張高まり ⇒ 最悪、撃墜や武力衝突へ。火器管制レーダー照射は「実際の射撃こそ行わないが、引き金を引く直前の行為」として、軍事的緊張を高める。
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抑止・威嚇の一環:相手に「こちらはいつでも攻撃できる」「領空/海域を主張する」と伝える手段。特に敏感な地域(領海、排他的経済水域、軍事演習海域など)では、軍事的プレッシャーや相手への牽制手段となる。
2-2. 国際的な規範との関係
火器管制レーダー照射は、明文で国際法に禁止されているわけではない。ただし、多国間で合意された行動規範や慣例(例えば、遭遇した軍艦や航空機同士の安全なやり取りを定めた行動基準など)では、「武器照準システムを相手に向ける行為は控えるべき」とされることが一般的だ。 防衛省+2防衛省+2
また、仮に攻撃に至らなくとも、「武力による威嚇」に該当し得る。このような行為は、対話や外交、安全保障環境において重大なリスクをはらむ。特に、自衛隊機や海自艦艇のような国家機関の正規軍に対する照射は、単なる「誤認」や「事故」では済まされず、意図的な挑発と受け止められる。
このような理由から、多くの国や同盟関係では火器管制レーダーの照射を「非常に危険な行為」「実質的なロックオン/攻撃準備行為」とみなすのが通例である。 日本戦略研究フォーラム+1
3. 2025年12月の中国軍機による自衛隊機への照射 ― 事実経過と日本政府の反応
2025年12月6日、 中国人民解放軍(中国軍)の戦闘機が、 航空自衛隊(ASDF)の戦闘機に対して火器管制レーダーを照射したとして、同日夜から翌7日にかけて日本政府が正式に抗議した。以下、経緯を整理する。
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防衛省によれば、沖縄本島南東の公海上空で、中国軍の空母 遼寧(Liaoning)から発艦した J-15 戦闘機が、対領空侵犯措置で待機していた自衛隊の F-15 戦闘機に対し、16時32分ごろから約3分間、そして18時37分ごろから約30分間、それぞれ断続的にレーダー照射(ロックオン)を行った。 防衛省+2Japan Times+2
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防衛相(当時発表時点)によれば、この照射は「安全な飛行に必要な範囲を超える」「極めて遺憾な危険な行為」であり、中国側に厳重な抗議と再発防止の申し入れを行った。 防衛省+1
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日本政府は、今回のような事案は極めて重大だと位置づけており、安全保障上の深刻な懸念を示している。 Sky News+1
この事件について、各国メディアも「火器管制レーダーを向ける行為は最も威嚇的な行動のひとつ」と説明。たとえ発射されなくとも、相手に「攻撃可能な状態」を示し、不測の事態を誘発する行為だと報じている。 Sky News+2DW News+2
日本側としては、隊員・機体に被害はなかったものの、軍事上のエスカレーションを防ぐため、そして同様の事案の再発を防止するために、中国に対して強く抗議し、外交および軍事チャンネルを通じた再発防止の要求を行った。 防衛省+1
なお、この 2025年12月の事案は、日本防衛省が公に認めた形での中国軍機による自衛隊機への「レーダー照射」の公表は初。国内外で大きな波紋を呼んでいる。 DW News+1
4. 類似の前例 ― 2018年の韓国海軍による自衛隊機への照射事案
今回の中国軍機による照射を理解するうえで、過去の類似事案が参考になる。なかでも代表的なのが、2018年12月20日に発生した、韓国海軍の駆逐艦による照射事件である。
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この日、能登半島沖で、海上自衛隊所属のP-1哨戒機が任務飛行中、韓国海軍の駆逐艦( クァンゲト・デワン級駆逐艦)から火器管制レーダーの照射を受けたと日本側が発表。 ウィキペディア+2Naval Today+2
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日本の防衛省は、当該照射が単なる捜索レーダーではなく、火器管制レーダーによるものであると分析。射撃管制用レーダーを照射する行為は、武器使用の直前行為であり、「攻撃の一歩手前」「非常に危険な挑発行為」と結論づけた。 防衛省+2Naval Today+2
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この事件は外交的対立を生み、両国間に深刻な軍事・外交問題となった。最終的に、再発防止を目的とした合意文書が交わされたとの報道もある。 ハンギョレ新聞+2ウェブロンザ+2
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また、同事案は多くの国際メディアでも報じられ、火器管制レーダー照射が国際的な問題になり得るという認識を広めるきっかけとなった。 Naval Today+2ウェブロンザ+2
この例から明らかなように、火器管制レーダー照射は、単なる「監視」や「接近」ではなく、明確な武力的威嚇・攻撃準備行為とされ、多くの国際関係の摩擦・混乱を引き起こす行為である。
5. なぜ両国事案が大きな波紋を呼ぶのか
では、なぜこうした「単なるレーダー照射」がこれほど大きな問題になるのか。以下に、その理由を整理する。
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武力衝突の入口になり得る
火器管制レーダー照射は、ミサイル発射直前の行為と同等とみなされるため、被照射側が回避行動を取れば、それだけで「敵対行為」と認識され、相互に武器搭載・警戒体制強化など軍事的緊張が高まる。特に尖閣周辺、沖縄近海、排他的経済水域 (EEZ) 付近などで繰り返されれば、衝突の火種となる。 -
国際規範・常識の破壊
多国間で合意された行動規範 (たとえば、遭遇時の安全なやり取りを定めたルール) に反する行為である。これを許せば、「ロックオン=攻撃準備」が暗黙のルールになりかねず、軍事情勢の不安定化、常態化、さらに「エスカレーションの常態化」を招く可能性がある。 -
抑止と威圧の戦術として使いやすい
実弾を撃たずとも、「いつでも撃てる」というメッセージを送る手段として、意図的に使いやすい。特に、軍事的な力の差や政治・外交的プレッシャーを背景とする国(たとえば大国 vs 周辺国)にとって、コストの低い威圧ツールとなる。 -
信頼と安全保障の基盤を揺るがす
同盟関係や国際協力、地域の安定は、互いの「非敵対性」と「安全な運用ルール」の信頼の上に成り立つ。だが、火器管制レーダー照射のような行為が増えれば、「相手国がいつでも攻撃態勢に入れる」という不安が漂い、外交・外交同盟・軍事協力すべてに悪影響を及ぼす。
以上の理由から、火器管制レーダー照射は一国の国内問題にとどまらず、国際社会や地域の安全保障にとって重大な懸念材料となるのである。
6. 結び ― レーダー照射問題の意味と今後
今回の 2025年12月の事案は、中国軍機が公海上で日本の自衛隊機に対し火器管制レーダーを照射したという、これまでにない明確な「ロックオン」事案として、公に認められたものだ。防衛省・日本政府は強く抗議し、再発防止を求めている。これは、単に「また領海・空域での挑発」ではない。むしろ、地域の安全保障のルールをめぐる、新たな峠道に差し掛かった危険な事態とみるべきだ。
過去には、2018年に韓国海軍による自衛隊機への火器管制レーダー照射事件があった。あのときも大きな外交問題となり、両国は最終的に再発防止の合意を交わした。しかし、それでも「火器管制レーダー照射」が国際社会から批判を受ける理由は変わらない。
今回の事案をめぐっては、以下の論点が今後の焦点になるだろう。
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再発防止のための安全な行動規範 (CUES など) の強化、徹底。
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日中間の軍事的・外交的対話の再開と緊張緩和の努力。
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地域の他国 (近隣諸国、同盟国) を巻き込んだ安全保障協調・情報共有の強化。
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最悪の事態に備えたリスク管理と対応体制の整備。
読者諸氏においては、レーダー照射という一見「技術的・専門的」な行為が、いかに国際関係、地域の安全、日本の防衛政策にとって重大な意味を持つかを、ぜひ理解していただきたい。
最後に。レーダー照射は、「撃たずとも撃てる状態」をつくる行為であり、それは「静かなながらも不穏な銃口を向ける行為」といってよい。こうした行為が常態化すれば、紛争のハードルは格段に下がる――それこそ我々が最も警戒しなければならない事態である。
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