なぜ「否決」の方向に動いたのか~「ウナギの取引規制案が正式に否決されました」な女子アナさんのLINEスタンプ

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ウナギの国際取引規制案が否決された。わたしはそんなに頻繁にウナギを食べるわけではないが、嬉しかった。

以下、ワシントン条約締約国会議 (CoP20)における「ウナギの国際取引規制案」が正式に否決された経緯について、年表の形式で整理するとともに、なぜ「否決」の方向に動いたのか、その決め手となった要因について考察する。

なぜウナギの取引規制案は「否決」の方向に動いたのか


ウナギ取引規制案を巡る主な出来事

年/時期 出来事・動き
2013年 2月 日本国内で、ニホンウナギが自然環境保全の観点から、国内のレッドリストにおいて「絶滅危惧IB類」に指定される。ねとらぼ+1
2014年 国際的な評価機関であるInternational Union for Conservation of Nature (IUCN) のレッドリストでニホンウナギが絶滅危惧種(EN 相当)に指定される。これにより、ウナギ類の資源減少への懸念が国際的に共有される。NACS-Jの自然保護+1
2000年代以降〜2020年代前半 ウナギの乱獲、河川改修による河川環境の悪化、ダム建設、密漁・密輸、環境汚染、気候変動など、多様な要因でウナギ類の個体数が大幅に減少。特にシラスウナギ(稚魚)の需要が高く、養殖業も含めた国際取引や不透明取引が問題視される。日本自然保護協会+2ifb-research.jp+2
2007年 欧州系のヨーロッパウナギ (Anguilla anguilla) が、すでに国際取引の規制対象(CITES 附属書 II)に指定されていた。Kyodo News English+1
2025年 4月 European Union (EU) が、「ウナギ属 (Anguilla 属) のすべての種」を、CITES の附属書 II に加える提案を準備していることが報道される。すなわち、ヨーロッパウナギだけでなく、ニホンウナギや米国ウナギなども国際取引の規制対象に含めようというもの。これが日本などウナギ消費国の関心を集める。Kyodo News English+1
2025年 6月 24日〜27日 日本政府が正式にこの提案に反対する意志を表明。国内の水産資源は適切に管理されており、「国際取引による絶滅の恐れはない」と主張。中国、台湾、韓国などと協調し、他国へも反対を働きかける構えを示す。Nippon+2The Japan Times+2
2025年 11月 24日 ウズベキスタンのCITES 事務局主催による締約国会議 (CoP20) が開幕。提案に対して各国の意見調整、駆け引きが続く。日本は否決に向けて最終調整と拠点交渉を展開。テレ朝NEWS+1
2025年 11月 27日 委員会による採決が行われる。結果は、賛成 35票、反対 100票、棄権 8票。必要な賛成多数(3分の2)に届かず、提案は否決される。つまり、ウナギ全種を対象とした国際取引の包括的な規制案は通らなかった。The Japan Times+3テレ朝NEWS+3テレ朝NEWS+3
2025年 11月 27日(同日深夜〜28日) 各報道機関が「否決」の第一報を報道。日本では、ウナギ販売・流通関係者などから安堵の声があがる。ライブドアニュース+2ライブドアニュース+2

なぜ「否決」の方向に動いたのか —— 主な論点と決め手

◎ 科学的根拠の不十分さへの懸念

まず最大の決め手となったのは、「提案が科学的根拠を十分に伴っていない」とみなされたことである。

  • 提案を支持する側(EU など)は、ウナギ類全体の取引を規制対象にすれば、密輸や種の偽装混入による違法流通に歯止めをかけられると主張していた。たとえば、稚魚(グラスウナギ)や加工品の段階では種の識別が難しいため、見た目が似ている種を混ぜて出荷する不正の温床になる、という懸念を理由として挙げていた。AgTechNavigator.com+2AgTechNavigator.com+2

  • しかし、反対する国々(日本をはじめ、中国、韓国など)は、それが「見た目の類似性」だけを理由にすべての種を一括で規制するのは過剰であり、安易に包括指定すべきではないと主張した。特に、日本政府は「現在の漁獲・資源管理体制で十分」であり、国際取引がすぐに絶滅リスクにつながるという因果関係は明確ではないと反論した。AgTechNavigator.com+2The Japan Times+2

  • また、ある科学的評価 (Expert Panel) によれば、ニホンウナギなどについては個体数保持性 (population viability) の観点から、附属書II 掲載基準を満たしていないとの結論も出されていた。特に、「国際取引が個体数減少の主因であるという明確なデータが十分でない」「むしろ既存の地域・国内管理制度での持続的利用の方が有効」とする見解があった。ifb-research.jp+1

以上の点から、「科学・管理の現状を踏まえると、国際的な包括指定は妥当ではない」という論調が多くの国を説得した。


◎ 経済的・文化的な配慮、現場の事情

次に、ウナギが単なる生物資源ではなく、消費国にとって重要な 食文化・産業 である、という現実が大きな重みを持った。

  • 特に日本では、ウナギ ― とりわけニホンウナギ ― は伝統的な食文化の中で重要な位置を占める。もし国際取引に許可証の発行義務や厳しい規制が課されれば、流通コスト増加や供給不安による価格高騰、あるいは流通量の制約につながる可能性があった。実際、提案成立を前提に「輸入量の激減」「市場価格の高騰」「うなぎ料理の価格高騰や供給不安」を危惧する声があった。テレ朝NEWS+2朝日・日刊スポーツ+2

  • 加えて、ウナギの養殖業や流通業、飲食業界など多くの関係者が関与しており、規制が厳しくなればこれら産業に影響が及ぶ可能性が高い。そうした経済的利益や地域産業の維持といった現実的な利害が、否決を後押ししたと考えられる。

国際保全と食文化・産業の継続という価値の衝突が、最終的に「後者を重視する」判断を、多数の国が採ったのである。


◎ 各国の協調とロビー活動、外交交渉の成果

三つめの決め手は、実際の外交交渉および各国の連携による支持の広がりである。

  • 日本は、提案直前まで中国や韓国などと協力して反対の働きかけを行っていた。締約国会議の冒頭から、否決に向けたキャンペーンを展開。会期中も各国代表に対し説明や説得を重ねたという報道がある。テレ朝NEWS+2テレ朝NEWS+2

  • 実際、最終的な採決では賛成 35票、反対 100票、棄権 8票という大差で否決された。加盟国 143のうち、約 7割が反対票を投じたことになる。これは、単なる数的不利ではなく、広範な国際的な支持を得た結果である。テレ朝NEWS+2The Japan Times+2

  • また、反対票を投じた国の中には、資源保護の名目だけでなく「過度な規制は国際貿易に負担をかける」という立場を取る国も多かった。特に、発展途上国やアジア諸国の中には、「見た目の類似性だけで包括指定するのは不適切だ」という根本的な懸念を示す国もあった。テレ朝NEWS+2ジャカルタ・ポスト+2

結果として、多数の国が「現行の国・地域ごとの管理体制を尊重すべき」「包括的なリスト登録は時期尚早」という判断を下したのである。


なぜこのような提案が出されたのか:背景と問題意識

では、そもそもなぜ EU などはウナギ全種の国際取引規制を求めたのか。その背景には、以下のような問題意識があった。

  1. ウナギ類の世界的な個体数激減
     過去数十年にわたり、ヨーロッパウナギ、ニホンウナギ、米国ウナギなど主要なウナギ類が共通して深刻な減少傾向にある。これは乱獲、河川環境悪化、密漁・密輸、気候変動など、複合的な要因によるもの。国際機関や研究者の間では、将来的な資源枯渇、さらには絶滅の懸念が強く指摘されてきた。日本自然保護協会+2物理ニュース+2

  2. 違法取引および種の偽装混入の実態
     ウナギの稚魚(グラスウナギ)や加工品は、種の判別が非常に難しい。異なるウナギ属種が混在して取引されやすく、それによって密輸や違法取引、過剰な乱獲が継続しているとの指摘がある。こうした実態を封じるためには、国際的な包括的規制が効果的だ、というのが提案側の主張であった。AgTechNavigator.com+2AgTechNavigator.com+2

  3. 国際的な制度の不整合
     既にヨーロッパウナギは CITES 附属書 II に指定されていたが、他のウナギは未指定という「抜け穴」があった。これによって、合法な流通と違法取引の線引きが困難であり、全種を一律に管理すれば制度的に整理できるとの論理があった。Kyodo News English+2AgTechNavigator.com+2

こうした問題意識のもと、EU はウナギの国際取引規制の強化を提案したのである。


なぜ否決になったか:反対側の主張と現実

ではなぜ、それにもかかわらず今回の提案が否決されたのか。上で挙げた「決め手」に加え、以下のような根拠と現実があったためである。

  • 科学的・管理的整備が既にある
     日本を含む東アジア諸国では、過去数年にわたり、ウナギの資源評価・管理を目的とした研究体制 (たとえばウナギユニット) を整備し、漁獲量管理、稚魚採捕の上限設定、国際協力による資源モニタリングなどを実施してきた。これにより、単に国際取引を制限するよりも、地域ごとに資源を管理する方が有効との見解があった。ifb-research.jp+2ifb-research.jp+2

  • 包括指定の拡大に対する慎重論
     たとえ稚魚や加工品の段階で種の識別が難しいとしても、「すべてのウナギをひとまとめにする」という設計は、生態・資源状況・取引構造が異なる多数の地域を不必要に縛る過剰規制だ、との反対論が根強かった。特にアジアや発展途上国では、「書類手続きや許可制度の負担が過大」「合法流通が萎縮し、むしろ違法闇取引を助長するリスクがある」と懸念された。AgTechNavigator.com+2ジャカルタ・ポスト+2

  • 経済・文化への影響
     ウナギは日本をはじめ多くの国で食文化・産業の一翼を担っており、いきなり国際取引に許可制を敷くことで、価格高騰、供給不足、加工・流通業への影響などが懸念された。こうした実利的な事情が、加盟国にとって重要な判断基準となった。朝日・日刊スポーツ+2ABEMA TIMES+2


否決の意味と今後の課題

今回の否決は、一時的な勝利とも言える。しかし、それが ウナギ保護・資源管理の終わり を意味するわけではない。むしろ、以下のような意味と課題が浮かび上がっている。

  • 地域的・国ごとの資源管理の重要性が再確認された
     包括的な国際リストによる規制ではなく、各国・地域での実態に即した資源管理、モニタリング、漁獲・養殖管理が重要であるという認識が強まった。日本では、今後も国内管理体制の強化、研究・データ収集の継続が必要である。

  • 違法取引・密輸・不透明な取引の根絶には別の対策が必要
     種の偽装や混入の可能性など、違法取引の温床となってきた構造は、国際規制ではなく、取引の透明化、識別技術の導入、追跡可能な流通経路の確立などで対応すべき、という指摘があらためて強まった。

  • 持続可能な養殖と代替種の検討
     世界的にウナギ資源が減少している現状を踏まえると、天然ウナギへの依存を減らすため、完全養殖や代替種の利用、養殖管理の強化、消費者の理解と協力が求められる。

こうした視点を含め、今後は「規制」ではなく「管理」と「持続可能性」を両立させる道を模索する必要がある。


結び — 否決はゴールではなく、新たなスタート

今回の国際会議での否決は、ウナギを取り巻く規制の世界では一つの節目に過ぎない。確かに、国際的な包括規制は見送られたが、それは「もう保護は不要」という意味ではない。むしろ、さまざまな国・地域、文化、流通構造が混在する中で、より現実的で、かつ持続可能な管理・保全策を自ら築いていく必要性が浮き彫りとなった。

今後、ウナギ資源を未来に残すためには、国際ルールの強制だけではなく、科学的根拠に基づいた資源管理、漁業・養殖・流通の透明性、消費者の理解、そして文化との共生——それらを包括した 新たな協調と責任の仕組み が求められる。

ウナギを単なる「食材」ではなく、「共有すべき自然資源」として捉え直すことが、結果として資源の持続と食文化の継続につながるはずである。

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