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印旛沼の堤防決壊で考える「次に備えるべき」関東の洪水危険地域ベスト10

はじめに――印旛沼の堤防決壊は「他人事」ではない

2026年9月22日、台風25号による記録的な大雨で、千葉県の北印旛沼周辺では堤防が決壊し、大規模な浸水被害が発生した。

千葉県によると、北印旛沼では約100メートルにわたって堤防が決壊し、さらに流入する農業排水路の堤防も決壊した。成田市や印西市、佐倉市など周辺地域では浸水が発生し、国土交通省のTEC-FORCEも復旧支援に入ることになった。

さらに、水資源機構によれば、印旛沼では管理開始以来最高となる5.04メートルの水位を観測したとの報道もある。

今回の出来事で重要なのは、「印旛沼だから起きた特殊な災害」と考えないことである。

関東には、利根川、江戸川、荒川、多摩川、鶴見川、相模川などの大河川が流れている。さらに霞ヶ浦や手賀沼、渡良瀬遊水地周辺など、巨大な水量を抱える地域も存在する。

そこで今回は、同じような大雨が降った場合に、洪水・越水・堤防決壊による浸水への備えを特に確認しておきたい関東の地域10か所を取り上げる。


関東の洪水・浸水リスク地域ベスト10

1位 利根川下流域――千葉県北東部・茨城県南部

最初に確認しておきたいのが利根川下流域である。

対象となる地域には、千葉県の我孫子市、印西市、成田市、香取市周辺や、茨城県の取手市、龍ケ崎市、河内町、利根町などが含まれる。

利根川下流河川事務所は、利根川だけでなく小貝川、手賀川についても、堤防決壊などを想定した洪水浸水想定区域図を公表している。そこには浸水範囲だけでなく、浸水深や浸水継続時間、家屋倒壊等氾濫想定区域も示されている。

今回の印旛沼氾濫を考えると、特に注意したいのが「水が集まる地域」である。

利根川水系では、河川だけでなく支川や排水施設など複数の要素が関係するため、一つの場所だけを見て安心することはできない。

自宅が利根川から離れていても、周辺河川や排水路の氾濫を確認することが重要である。


2位 中川・綾瀬川流域――埼玉県東部~東京都東部

次に警戒したいのが中川・綾瀬川流域である。

埼玉県東部から東京都足立区、葛飾区、江戸川区周辺に広がる低地であり、国土交通省も「水がたまりやすい皿のような地形」と説明している。

中川・綾瀬川流域では、利根川、江戸川、荒川などの大河川に囲まれていることも特徴である。

東京都の洪水浸水想定区域図では、中川、綾瀬川、新中川、旧江戸川などを対象に、想定最大規模降雨による浸水想定が公表されている。

この地域では、

  • 河川氾濫
  • 堤防決壊
  • 内水氾濫
  • 長時間の浸水

を別々に考える必要がある。

「川が決壊しなければ大丈夫」とは限らない地域である。


3位 荒川下流域――東京都北東部・埼玉県南東部

東京の水害を考えるうえで外せないのが荒川である。

荒川が氾濫した場合、東京都北区、板橋区、足立区、葛飾区、墨田区、江戸川区など広い地域が影響を受ける可能性がある。

国土交通省は荒川について、堤防決壊などによる氾濫流の広がり、水深、浸水継続時間を確認できる洪水浸水想定区域図を公開している。

特に都市部では、道路や鉄道、地下施設、電力、通信などが同時に影響を受ける可能性がある。

したがって荒川流域では、単に「自宅が浸水するか」だけでなく、

「浸水した場合、生活そのものが何日間止まるのか」

という視点で備える必要がある。


4位 江戸川流域――千葉県西部・埼玉県東部・東京都東部

江戸川も重要な警戒対象である。

千葉県の松戸市、流山市、野田市、市川市、東京都江戸川区、葛飾区、埼玉県三郷市、吉川市など、非常に多くの人口を抱える地域を流れている。

江戸川についても洪水浸水想定区域が公開されており、想定される浸水範囲を事前に確認できる。東京都も江戸川の洪水浸水想定区域図をハザードマップの基礎資料として掲載している。

ここで重要なのは、「堤防から離れているから安全」という考え方を捨てることである。

洪水では大量の水が広範囲に移動するため、河川から数キロ離れた地域でも浸水する可能性がある。


5位 霞ヶ浦・北浦周辺――茨城県南東部

湖沼の水位上昇という点では、霞ヶ浦周辺も非常に重要である。

霞ヶ浦河川事務所は、霞ヶ浦、北浦、鰐川、常陸利根川、横利根川について洪水浸水想定区域図を公開している。

しかも単なる浸水区域だけではなく、想定最大規模、浸水継続時間、家屋倒壊等氾濫想定区域なども公表されている。

対象地域では土浦市、かすみがうら市、潮来市、稲敷市などが挙げられる。

印旛沼の今回の被害を考えるなら、

「湖だから河川より安全」という考え方は危険である。

大量の雨が流れ込めば、湖沼そのものの水位が上昇するからである。


6位 鬼怒川・小貝川流域――茨城県南西部

2015年の関東・東北豪雨による鬼怒川の氾濫は、関東の水害を考える上で忘れてはならない。

常総市、つくばみらい市、取手市などでは、鬼怒川や小貝川の洪水について確認しておく必要がある。

国土交通省は小貝川について、想定最大規模の洪水浸水想定区域図だけでなく、堤防決壊による氾濫流や浸水継続時間についても公開している。

特に注意したいのは、河川が決壊した場合の「水の勢い」である。

浸水深だけではなく、家屋倒壊等氾濫想定区域にも注目したい。


7位 利根川中流・渡良瀬川流域――群馬県東部・栃木県南部・埼玉県北東部

利根川上流から中流にかけても巨大な洪水リスクを抱えている。

群馬県館林市、板倉町、栃木県栃木市、埼玉県加須市、久喜市などでは、利根川や渡良瀬川など複数の河川について確認が必要である。

国土交通省は利根川、渡良瀬川、思川などについて、想定最大規模の洪水浸水想定区域や、堤防決壊時の氾濫流、河岸侵食、浸水継続時間などを公表している。

河川が複数存在する地域では、「自宅の最寄りの川」だけでなく、流域全体を見ることが防災のポイントになる。


8位 多摩川下流域――東京都西部・南部~神奈川県東部

東京西部から大田区、川崎市などを流れる多摩川も忘れてはならない。

多摩川は都市部を流れる大河川であり、氾濫すれば住宅地だけでなく交通網や事業所にも大きな影響を及ぼす可能性がある。

国土交通省は多摩川について、堤防決壊を想定した洪水氾濫シミュレーションを公開している。決壊地点ごとの浸水範囲や浸水深を時系列で確認できる仕組みになっている。

都市部の洪水では、道路冠水によって車が動けなくなるケースもある。

「車があるから避難できる」という発想ではなく、道路が使えなくなる前に避難することが重要である。


9位 鶴見川流域――横浜市・川崎市

神奈川県では鶴見川流域にも注目したい。

横浜市北部から川崎市方面にかけて広がる都市部を流れる鶴見川は、都市型水害を考えるうえで重要な河川である。

国土交通省は鶴見川について、想定最大規模降雨による洪水浸水想定区域を公表している。また、鶴見川だけでなく矢上川、早淵川、鳥山川などについても資料が用意されている。

ここでは河川氾濫だけでなく、短時間に猛烈な雨が降った場合の内水氾濫にも注意したい。

都市部ほど、

「川があふれる前に道路が水没する」

という状況が起こり得るからである。


10位 相模川流域――神奈川県央・湘南地域

最後に挙げたいのが相模川流域である。

相模原市、厚木市、海老名市、寒川町、平塚市、茅ヶ崎市など、神奈川県の広い範囲に関係する。

国土交通省の洪水氾濫シミュレーションでは、多摩川、鶴見川とともに相模川についても堤防決壊時の浸水状況を確認できる。

相模川では、上流で降った大量の雨が下流へ流れてくることを考える必要がある。

つまり、

「自分の住んでいる場所ではそれほど雨が降っていないから大丈夫」

とは限らない。

流域全体の雨量と河川水位を見ることが重要である。


「危険地域ランキング」より重要なこと

ここまで10地域を挙げたが、これは「1位の地域が危険で、10位なら安全」という意味ではない。

洪水は、雨の降り方、河川水位、堤防の状態、排水能力、土地の高さ、潮位など複数の条件によって被害が変わる。

また、国土交通省が公開している洪水浸水想定区域図そのものも、あくまで一定の条件を設定したシミュレーションである。

例えば鶴見川の想定最大規模の資料では、支川の決壊、想定を超える降雨、高潮、内水氾濫などがすべて考慮されているわけではなく、想定区域外でも浸水する可能性があると説明されている。

したがって、防災で最も重要なのは「ランキング」そのものではない。

自宅周辺のハザードマップを確認することである。


いざというときのために今日からできる5つの備え

1.自宅の浸水深を確認する

まず自治体の洪水ハザードマップを見る。

「浸水するか、しないか」だけではなく、

  • 最大浸水深
  • 浸水継続時間
  • 家屋倒壊等氾濫想定区域
  • 避難所
  • 避難経路

を確認しておきたい。

2.避難場所を2か所以上決める

避難所は一つだけにしない。

大雨のときには道路が冠水し、予定していた避難経路が使えなくなる可能性がある。

「第一避難先」と「第二避難先」を決めておけば安心である。

3.車を高い場所へ移動する

洪水が迫ってから車を移動させようとすると危険である。

大雨が予想される段階で、安全な高台や立体駐車場などへの移動を検討する。

4.停電と断水を想定する

洪水では電気や水道、通信などが同時に止まる可能性がある。

最低でも、

  • 飲料水
  • 非常食
  • モバイルバッテリー
  • 懐中電灯
  • 携帯ラジオ
  • 簡易トイレ
  • 常用する生活用品

などを準備しておきたい。

5.「避難は早め」を原則にする

最も重要なのがこれである。

洪水では、水位が上がってから逃げようとすると道路がすでに冠水していることがある。

特に高齢者や小さな子どもがいる家庭では、避難に時間がかかる。

危険になってから避難するのではなく、危険になる前に移動する。

これが洪水防災の基本である。


まとめ――印旛沼の決壊を「自分の地域の防災」に変える

今回の印旛沼の堤防決壊は、関東で暮らす人にとって非常に重要な教訓となった。

大河川だけが危険なのではない。

湖沼、支川、排水路、農業用水路などが増水し、そこから浸水被害が広がる可能性もある。実際、今回の北印旛沼では沼の堤防だけでなく、流入する角川の堤防でも決壊が確認されている。

今回挙げた10地域は、

  1. 利根川下流域
  2. 中川・綾瀬川流域
  3. 荒川下流域
  4. 江戸川流域
  5. 霞ヶ浦・北浦周辺
  6. 鬼怒川・小貝川流域
  7. 利根川中流・渡良瀬川流域
  8. 多摩川下流域
  9. 鶴見川流域
  10. 相模川流域

である。

しかし、本当に確認すべきなのは「ランキング」ではない。

あなたの家がどこまで浸水するのか。どこへ逃げるのか。いつ逃げるのか。

この3点である。

印旛沼の被害をニュースとして見るだけで終わらせず、自分の住む地域のハザードマップを開いてみる。

それだけでも、いざというときの行動は大きく変わる。

大規模水害への備えは、災害が起きてから始めるものではない。

何も起きていない今日こそ、最も安全に準備できる日なのである。

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