自衛隊の災害派遣の最新動向(令和6年度)と『クマ害じゃあっ!』な小泉進次郎さんのLINEスタンプ
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進次郎防衛大臣は「クマ害」と表現した。「熊谷」ではない。
自衛隊の派遣対象に害獣駆除はない。つまり、怪獣や宇宙人が現れたとしても派遣されないのだ。
とはいえ、国民の生命や財産を守るために自衛隊はあるわけで、今後、派遣するための要件も変わってくるのかもしれない。
そんな自衛隊派遣だが、実際には年間に一体何件くらいあるのだろうか。
令和6年度の自衛隊派遣の件数と、主な内容について調べてみた。
はじめに
自衛隊は、「我が国への侵略からの防衛」を主たる任務とする一方で、災害派遣等を通じて国民の生命・財産を守るという「従たる任務」を担っている。 経済産業省+1
たとえば、自然災害や事故などに際して自治体から要請を受けて出動する「災害派遣」がこれにあたる。 経済産業省+1
ご質問にあるように、「怪獣・宇宙人」等、いわゆる異常事態が自衛隊派遣対象になるかという議論も、実際には法制度・運用の枠組みによって決まっており、現在は「害獣駆除」や「怪獣対応」は明文上、派遣対象とはなっていない。だが、現実の災害・緊急事態は刻々と形を変えており、派遣要件や制度運用が今後変わる可能性も議論されている。
以下、まず令和6年度の数値と実績を整理し、そのうえで主な対応内容、制度上のポイント、展望を論じる。
令和6年度の派遣件数・実績
派遣件数・人員
令和6年度における自衛隊の災害派遣の実績は、以下の通りである。
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派遣件数: 377件。 防衛省+1
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活動人員(延べ): 約 46,000人。 防衛省+1
※「延べ」の人員とは、一人が複数日にわたって活動したり、複数部隊が重なったりした場合も含めた合計値である。 -
不発弾等処理実績:
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陸上における不発弾等処理件数: 1,273件(処理重量:約37.2トン) 防衛省+1
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海上における機雷処理は実績なし。 J ディフェンス ニュース+1
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海上におけるその他の爆発性危険物処理個数: 1,249個(処理重量:約2.2トン) 防衛省+1
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これまで過去10年ほどの推移を見ると、災害派遣件数は年間おおむね 500件前後という時期もあったが、近年は500件を下回る年も出てきている。 経済産業省+1
令和6年度の377件という数値は、過去と比べるとやや少ない部類に属する。
(ただし、件数だけで「活動量」が分かるわけではなく、「人員」「活動内容」「被害規模」等と併せて総合的に判断する必要がある。)
主な活動種類・内訳
令和6年度に実施された主要な派遣活動の種類とその概要は、以下のとおりである。 防衛省+1
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風水害対応に係る災害派遣
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活動人員(延べ): 約 29,000人。 防衛省+1
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時期・地域例:2024年7月~12月にかけて、山形県・愛知県・石川県・宮崎県等で大雨・土砂災害が発生。 防衛省
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主な活動内容:人命救助、輸送支援、給水支援、入浴支援、道路啓開(道路を使える状態にする)など。 J ディフェンス ニュース+1
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林野火災の消火に係る災害派遣
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活動人員(延べ): 約 8,800人。 防衛省+1
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地域例:北海道・山形県・岩手県・長野県・群馬県・東京都・山梨県・奈良県・広島県・岡山県・山口県・愛媛県・宮崎県・鹿児島県など多数。 防衛省
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主な活動内容:自治体による消火活動が行われたものの鎮火に至らなかったケースに対して、空中消火活動を実施。 J ディフェンス ニュース+1
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鳥インフルエンザ対応に係る災害派遣
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活動人員(延べ): 約 6,500人。 防衛省+1
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地域例:岩手県・茨城県・千葉県・新潟県・愛知県・島根県等。 防衛省
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主な活動内容:鶏の殺処分支援など、家畜伝染病対策支援。 J ディフェンス ニュース+1
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急患輸送
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活動人員(延べ): 約 1,600人。 防衛省+1
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地域例:北海道・東京都・長崎県・鹿児島県・沖縄県等。 防衛省
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主な活動内容:急患空輸など、災害・事故発生時の患者搬送支援。 J ディフェンス ニュース
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このように、令和6年度の派遣実績は、「自然災害対応(風水害・林野火災)」「動物・伝染病対応(鳥インフル)」「急患輸送」「爆発物処理(不発弾等)」という多様な種類を包含しており、かなり広い範囲をカバーしている。
制度・運用上のポイント
派遣の制度的枠組み
災害派遣を受ける枠組みには、いくつかの要件がある。例えば、災害派遣は自治体(都道府県知事など)が「要請」するのが原則である。 経済産業省+1
具体的には:
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要請権者:都道府県知事、海上保安庁長官、管区海上保安本部長、空港事務所長など。 経済産業省+1
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派遣時には、「公共性」「緊急性」「非代替性(ほかの手段では対応困難)」という観点が確認される。 経済産業省
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自衛隊本来任務の一つである災害派遣は、「侵略からの防衛」に次ぐ任務という位置付けである。 経済産業省+1
このように、制度的には「要請を受けて」「自治体等の行政機関の支援を目的として」「自治体が対応困難な状況」で自衛隊が派遣されるという枠組みがある。
運用上の留意点・近年の変化
近年、自衛隊の災害派遣運用には以下のような変化・留意点が指摘されている。
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初動対応の迅速化:過去の大震災対応の経験から、自治体の要請を待つだけでは初動に遅れが出るとの反省があり、発災直後の部隊展開を念頭にした運用整備が進んでいる。 ユーザーケイオー+1
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多様な「災害」概念:従来の「地震・台風・洪水」だけでなく、林野火災・動物・伝染病・不発弾処理といった多様な事態が対象となっている。令和6年度の実績がその好例である。
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“非伝統的”な事態に対する議論:たとえばクマの出没、獣害、感染症、災害廃棄物処理など、自治体・地域が対応困難なケースが増えており、自衛隊の出動要請に対する議論も活発化している。実際、最近では「クマの街」秋田県で自衛隊の派遣観測が報じられている。 毎日新聞
法制度・派遣対象の範囲と「異常事態」
ご質問の文脈である「怪獣・宇宙人」「害獣駆除」などは、現行の制度上、自衛隊派遣の典型的な対象ではない。現行制度で明確に想定されているのは、自然災害、伝染病(家畜・人畜)、事故・爆発物、不発弾処理といった事案である。
一方で、自治体側が対応困難と判断し、かつ要請を行えば、自衛隊が派遣される可能性のある「公助」の枠で議論される余地はある。たとえば「獣害が深刻化し、自治体では対処不能」という状況があれば、要請を受けて調整される可能性がないとは言えない。前述の報道でも、そのような方向性の議論が出てきている。
とはいえ「怪獣」「宇宙人」といった想定はかなり想像的であり、制度的な整備・法的根拠・政治的判断など多くのハードルがあるため、少なくとも現時点では正式な派遣対象とはされていない。
今後の展望・論点
社会・自然環境の変化と派遣ニーズの多様化
令和6年度の実績からも明らかなように、自衛隊が対応する事態は多様化している。
たとえば、林野火災・鳥インフルエンザ・急患輸送・不発弾処理など、従来の「地震・台風」の枠を超えている。
今後も気候変動による風水害の激甚化、災害範囲の広域化、人口減少・過疎化地域のインフラ脆弱化、動物・生物由来リスクの顕在化(獣害・感染症)などが想定される。
そのため、自衛隊派遣の制度・運用も「定型的な災害対応」だけでなく「新たなリスク対応」へと拡張していく可能性がある。
要請側・自治体の役割強化と「共助・自助」の重要性
自衛隊による派遣は、あくまで「自治体等の要請を受けて」「自治体等が対応困難な状況」であることが前提である。
そのため、自治体・地域住民が自助・共助の備えを強化し、ハザードマップの確認、避難訓練、インフラ強化などを継続することが重要である。実際、香川県のある資料では「自助・共助の重要性を痛感した」との記述がある。 香川県公式サイト
また、自治体からの要請タイミングや自衛隊展開までの初動体制整備が今後も重要になる。
法制度・運用ルールの整理・拡充
派遣件数・活動内容の増加多様化に伴い、以下のような制度・運用上の論点が今後浮上し得る:
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「要請要件」の明確化と実務運用:どのような状況を「非代替性・緊急性・公共性」に該当とするか、自治体との連携のあり方。
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「初動展開」のスピード確保:大規模災害対応だけでなく、比較的小規模・多発する事案への迅速対応。
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「新たなリスク領域」への対応:獣害・動物被害、感染症拡大、気候変動起因災害など、従来の枠組みでは想定されていなかった事態への制度対応。
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「社会の受容性・政治的判断」:自衛隊派遣が増える・役割が拡大する中で、住民・自治体・国民の理解・制度的仕組み(費用負担・法令整備・部隊の即応性)など。
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「国際・安全保障的影響」との整合性:災害派遣と防衛任務とのバランス、部隊の常時即応体制の適切配置。
想定外事態(例えば害獣・怪獣・宇宙人対応)と制度の課題
ご質問にある「害獣駆除」「怪獣・宇宙人が現れたとき」などは現状制度上の典型的な対象ではないが、以下のような観点から議論の余地がある。
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害獣(例えばクマの出没・野生動物被害)については、自治体が対応困難と判断し、要請した場合、実質的に自衛隊派遣が検討される方向性が出つつある。前述の報道では秋田県で「クマ対応に自衛隊派遣」の観測がある。 毎日新聞
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「怪獣・宇宙人」といった極端な想定では、まず法制度上「何が災害か」「どこまでが自治体の責任か」「要請の主体・範囲」は大きな整備課題となる。
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今後、地球規模・異常事態的な自然災害・大型災害(例えば巨大隕石衝突、巨大UFO接近、大規模生物侵入等)の議論も、国家レベルで検討される余地がある。だが、現時点では制度化されておらず、「自衛隊派遣」の明確な根拠とはなっていない。
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本件を踏まえると、自衛隊派遣の要件(自然災害・伝染病・事故など)を超えて「新たなリスク対応枠」をどう位置付けるかが、今後の制度設計上の重要なテーマになる。
まとめ
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令和6年度の自衛隊災害派遣件数は 377 件、活動人員は延べ約 46,000 人であった。
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主な活動は、風水害対応(約29,000人)、林野火災消火(約8,800人)、鳥インフルエンザ対応(約6,500人)、急患輸送(約1,600人)である。
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制度的には、自治体からの要請を受けて、自衛隊が対応困難な状況で出動するという枠組みが基本である。
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今後、気候変動・社会構造変化・新たなリスク領域の出現により、自衛隊派遣の役割・制度・運用も一層多様化・高度化する可能性がある。
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「害獣駆除」や「怪獣・宇宙人対応」のような異常事態についても、制度的な検討余地はあるが、現状では明確な派遣対象とはならっておらず、今後の制度整備が鍵となる。
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