「新語・流行語大賞」の歴史と心に残る大賞一覧と、今年の対象候補のひとつ『ほいたらね』な坂本龍馬さんのLINEスタンプ
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今年も新語流行語大賞の季節になった。
今年は断トツに有名になった言葉がない、というのが特徴と言えば特徴か。
「ほいたらね」はNHKのテレビ小説で有名になった土佐弁である。
今日は新語流行語大賞の過去の大賞受賞語を紹介する。
「新語・流行語大賞」の歴史と心に残る大賞一覧
本稿では、1984年に創設された「新語・流行語大賞」(主催:自由国民社/協賛:ユーキャン)の歴史を振り返りながら、毎年の大賞・金賞級の受賞語の中から「特に印象に残る言葉」を年代順に紹介する。社会の変化を映す“ことば”として、いかに流行語大賞がその時代を象徴してきたかを検証する。なお、文章は「だ・である」調を採用する。
■創設から初期(1984〜1990)
まず、この賞がどのように始まったかを説明する。1984年(昭和59年)、自由国民社が発行する年刊辞典 『現代用語の基礎知識』 の読者アンケートにより候補語を募り、その後選考委員会で「金賞」「流行語」「新語」を選定する形でスタートした。 当初は「新語部門」「流行語部門」に分かれており、それぞれ金賞・銀賞等があった。1991年以降、年間大賞制度が導入された。
以下、代表的な受賞語を年代順に紹介する。
- 1984年:新語「オシンドローム」(NHK連続テレビ小説『おしん』のヒットによる社会現象)/流行語「まるきん・まるび」 この年、テレビドラマの影響力や“昭和から平成”への時代変化を象徴する語が選ばれた。
- 1985年:新語「分衆」(「一人一台」社会などを示唆)/流行語「イッキ!イッキ!」(一気飲み文化) 社会のライフスタイル変化と若者文化の台頭が窺える。
- 1986年:新語「究極」/流行語「新人類」 バブル期あるいはその前兆を感じさせる語彙が登場した。
- 1987年:新語「マルサ」(脱税摘発・マルサの女ブーム)/流行語「懲りない○○」 政治・社会のスキャンダルを背景にした語が選ばれている。
- 1988年:新語「ペレストロイカ」(ソ連改革)/流行語「今宵はここまでに(いたしとうござりまする)」 国際政治の変化が “新語” 領域に反映された。
- 1989年:新語「セクシャル・ハラスメント」/流行語「オバタリアン」 ハラスメント問題の普及、そして女性層の意識変化が表れた年である。
- 1990年:金賞「ファジィ」(曖昧さを肯定する言葉)/流行語「ちびまる子ちゃん(現象)」
文化コンテンツとともに“ファジィ”という概念が一般化した。
■年間大賞制度導入(1991〜2000年代初期)
1991年に年間大賞が設けられ、1994年からは「新語・流行語両部門を統合して年間大賞を選定」する方式に移行した。 以下に、印象深い大賞言葉を年代順で紹介する。
- 1991年:年間大賞「…じゃ、あ~りませんか」(お笑い芸人チャーリー浜) バブル経済崩壊前夜、軽妙な「ツッコミ」語が選ばれた。
- 1992年:年間大賞「うれしいような、かなしいような/はだかのおつきあい」(きんさんぎんさん) 高齢双子によるメディア出演を通じて生まれたフレーズとして注目された。
- 1993年:年間大賞「Jリーグ」(川淵三郎) 日本のプロサッカーリーグ創設が社会現象となった年。
- 1994年:年間大賞「すったもんだがありました」(宮沢りえ) アイドル・芸能界におけるトラブルが世相の象徴となった。
- 1995年:年間大賞「無党派」(青島幸男) 政治不信・有権者の離脱が言語化された。
- 1996年:年間大賞「自分で自分をほめたい」(有森裕子) アトランタ五輪銀メダルの直後、自己肯定感を言語化。
- 1997年:年間大賞「失楽園(する)」(渡辺淳一/黒木瞳) 恋愛小説での衝撃が社会的語彙として浮上した。
- 1998年:年間大賞「ハマの大魔神」(佐々木主浩) プロ野球での活躍が国民的ムーブメントとなった。
- 1999年:年間大賞「おっはー」(慎吾ママ)/「IT革命」(IT革命) “おっはー”のバラエティ文化と、“IT革命”という技術変革の両面が象徴的。
- 2000年:年間大賞「Qちゃん」(高橋尚子) シドニー五輪金メダルの「高橋尚子」旋風にちなむ言葉。
■2000年代半ば〜2010年代前半:社会・文化の転換期
この時期は、インターネット、携帯、スマホ、若者文化、ワールドカップ、震災など、さまざまな“転換”が言語としても顕在化した。ここでは印象深い大賞を紹介する。
- 2001年:年間大賞「小泉語録」(「米百俵」「聖域なき改革」「恐れず怯まず捉われず」「骨太の方針」「ワイドショー内閣」「改革の“痛み”」) 小泉純一郎政権期の政治・メディア変化を象徴。
- 2002年:年間大賞「タマちゃん」(川崎市のアザラシ話題) 動物ニュースが国民の話題になった典型。
- 2003年:年間大賞「毒まんじゅう」(野中広務) 政治スキャンダルが語型となった年。
- 2004年:年間大賞「チョー気持ちいい」(北島康介) 北京五輪を見据えて水泳で世界記録連発の北島選手が生み出した語。
- 2005年:年間大賞「小泉劇場」(武部勤)/「想定内(外)」(堀江貴文ほか) 政界・投資界の“劇場化”を反映した言葉。
- 2006年:年間大賞「イナバウアー」(荒川静香) トリノ五輪金メダルとその演技エレガンスが社会的言葉化。
- 2007年:年間大賞「(宮崎を)どげんかせんといかん」(東国原英夫) 地方活性化・知事ブームを象徴する語。
- 2008年:年間大賞「グ~!/アラフォー」(エド・はるみ/天海祐希) バラエティ文化と世代語が軸となった。
- 2009年:年間大賞「政権交代」(鳩山由紀夫) 民主党政権誕生が一語に集約された。
■2010年代中盤〜直近:SNS・ポップカルチャー・社会意識の言語化
この時期は、スマホ普及、SNS文化、東日本大震災・復興、人権・労働意識、オリンピック絡みなどが言葉として浮かび上がった。以下、特に印象的な大賞を抜粋する。
- 2010年:年間大賞「ゲゲゲの~」(武良布枝)/「~なう。」 スマホとSNS登場期、“なう”と妖怪ブームが相まって。
- 2011年:年間大賞「なでしこジャパン」(女子サッカー日本代表)/「絆」 東日本大震災の年、人々の心に響いたワードが選ばれた。
- 2012年:年間大賞「ワイルドだろぉ」(スギちゃん) 若手芸人ブームと“ワイルド”という言葉の定着。
- 2013年:年間大賞「今でしょ!」(林修)/「お・も・て・な・し」(滝川クリステル)/「じぇじぇじぇ」(宮藤官九郎/能年玲奈)/「倍返し」(堺雅人・TBS『半沢直樹』) “学び”“オリンピック招致”“朝ドラ”“企業ドラマ”の融合が言語化された。
- 2014年:年間大賞「ダメよ〜ダメダメ」(日本エレキテル連合)/「集団的自衛権」 政治・安全保障の議論とバラエティ語彙が並立した異例の年。
- 2015年:年間大賞「爆買い」(訪日外国人爆買い現象)/「トリプルスリー」(柳田悠岐・山田哲人) インバウンド経済・野球の記録達成という両軸が社会現象化。
- 2016年:年間大賞「神ってる」(緒方孝市・鈴木誠也) 広島カープ優勝と野球用語の深化が一体になった。
- 2017年:年間大賞「インスタ映え」/「忖度」 SNS時代・政治風土の双方が「ことば」として拡張された。
- 2018年:年間大賞「そだねー」(ロコ・ソラーレ) 平昌冬季オリンピックで注目された“ゆる・共感”語。
- 2019年:年間大賞「ONE TEAM」(ラグビー日本代表) ラグビーW杯日本大会の成功が一語に凝縮された。
- 2020年:年間大賞「3密」(小池百合子) 新型コロナウイルス感染症下の生活様式変化を象徴。
- 2021年:年間大賞「リアル二刀流/ショータイム」(大谷翔平) スポーツ界の国際的躍進が言葉化された。
- 2022年:年間大賞「村神様」(村上宗隆) プロ野球・若きスラッガーの象徴的呼称が全国に拡がった。
- 2023年:年間大賞「アレ(A.R.E.)」 直近の社会・文化状況を映すひとこととして大きな注目を集めた。
■心に残る“ことば”とその背景解説
上記の通り数多の言葉が選ばれてきたが、なかでも時代を象徴し、心に残るものをいくつかピックアップしてその背景を深掘りする。
「Jリーグ」(1993年)
日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)が1993年に開幕し、国内に“プロスポーツ文化”を定着させた。年間大賞に「Jリーグ」が選ばれたことは、スポーツが国民的文化のひとつになったことを象徴する。社会的には、バブル崩壊後の“新しいレジャー”や“地域活性化”の流れもあった。
「政権交代」(2009年)
2009年の衆議院選挙で、長く続いた自民党政権が変わり、民主党政権が誕生した。この“変化”を一語で表した「政権交代」が年間大賞に選ばれた。政治ニュースが国民の関心を集めた象徴的年であり、言葉としてのインパクトも大きかった。
「今でしょ!」(2013年)
予備校講師・林修氏がテレビCMおよびテレビ出演で「いつやるか?今でしょ!」と発言したことで流行。教育・受験文化、若者文化が合流する現象としても興味深い。言葉そのものが“やる気”を掻き立てるフックになった。
「3密」(2020年)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大下、日本政府・自治体が「密閉・密集・密接」の3つを避けるという感染防止対策を要請。市民の日常動作が“ことば”として取り上げられ、この「3密」が年間大賞となった。まさに社会が一変した象徴といえる。
「インスタ映え」(2017年)
SNS「Instagram」普及とともに、写真投稿・視覚的魅力が重視される時代へ。写真を撮って共有することが“映える”か否かが話題となり、その言葉が流行語大賞として選ばれた。時代の潮流=SNS世代を言語化している。
■まとめと今後に向けて
1984年の創設から約40年にわたり、「新語・流行語大賞」は毎年その年を象徴する“ことば”を選び続けてきた。新語・流行語には、その年の社会情勢・文化・技術・経済・スポーツ・メディアが凝縮されており、並べて眺めることで日本社会の変遷を理解する手掛かりとなる。
この一覧を見ると、バブル期・90年代・2000年代・2010年代・2020年代と、時代ごとに“何が国民の関心を集めたか”“何が話題になったか”が言語化されている。例えば、プロスポーツ、政治変動、SNS・スマホ文化、パンデミック、若者視点などが次々と“ことば”として選出された。
また、流行語大賞が“時代を先取りする言葉”であると同時に、“時代を振り返る言葉”にもなっている点が重要である。過ぎた年を俯瞰する際、この賞の受賞語は文化史・社会史の資料とも言える。
今後も、テクノロジーのさらなる進展(AI/メタバース)、ポストコロナ社会、地政学的変化などが“ことば”として表出するであろう。「あの年にはあの言葉があった」という記憶をたどるためにも、流行語大賞の歩みを振り返ることには大きな意義がある。
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