金正恩がまたミサイルを撃った本当の狙いとは?北朝鮮が2026年9月に弾道ミサイルを発射した理由を徹底解説~「わははは、撃て撃てーっ!」な金正恩さんのLINEスタンプ

LINEアニメスタンプ(非公式)

金正恩がまたミサイルを撃った本当の狙いとは?北朝鮮が2026年9月に弾道ミサイルを発射した理由を徹底解説

はじめに なぜ金正恩はまたミサイルを撃ったのか

北朝鮮が再び弾道ミサイルを発射した。

2026年9月20日、北朝鮮は東岸の元山付近から東の海上に向け、短距離弾道ミサイルとみられるミサイルを発射した。韓国軍によれば、最初の発射は午後3時ごろで、ミサイルは約450km飛翔した。その約3時間後には2発目も発射され、こちらは600km以上飛翔したとされる。日本の防衛省は1発目について、約440km飛翔し、最高高度は約60km、日本の排他的経済水域(EEZ)の外側に落下したと発表している。

今回の発射で重要なのは、「北朝鮮がまた挑発した」という一言だけでは説明できない点である。

北朝鮮は、2026年9月に入ってから米国、韓国、日本などによる軍事演習を強く批判している。9月12日にも弾道ミサイルを発射しており、今回の発射はわずか1週間余りで繰り返されたことになる。韓国軍によると、9月12日の発射は、韓米日による「フリーダム・エッジ」終了直後に行われた。

さらに9月17日には、金正恩総書記の妹である金与正氏が、米国主導の軍事演習を批判し、北朝鮮の安全保障上の利益が脅かされれば、より強い対応を取るとの趣旨の警告を発していた。

つまり今回のミサイル発射は、単独の出来事ではない。

そこには、

  • 米韓日への軍事的メッセージ
  • 米国との交渉に向けた圧力
  • 韓国へのけん制
  • 核・ミサイル戦力の実戦化
  • 国内向けの軍事力誇示
  • ロシアや中国との関係を背景にした外交的余裕

など、複数の目的が重なっていると考えられる。

では、金正恩氏の最大の狙いは何なのか。

結論から言えば、今回の発射だけから一つの目的を断定することはできない。しかし、北朝鮮の過去の行動や最近の発言を合わせると、**「戦争を始めるため」というより、「軍事力を背景に自国の交渉力と体制の生存能力を高めること」**が大きな目的の一つとみられる。


1.今回、北朝鮮は何を発射したのか

まず事実関係を整理しておきたい。

日本の防衛省によれば、9月20日午後3時ごろ、北朝鮮東岸付近から少なくとも1発の弾道ミサイルが北東方向へ発射された。

このミサイルは約440km飛翔し、最高高度は約60km程度と推定されている。また、落下地点は日本のEEZ外とみられており、日本政府は現時点で航空機や船舶などへの被害は確認されていないとしている。

韓国軍は、その後さらに別の短距離弾道ミサイルが発射されたとしている。

ロイター通信によれば、2発目は600km以上飛翔したとされ、韓国軍は1発目について北朝鮮の「火星11」系列に属する可能性があるとみている。

ここで注目すべきなのが射程である。

450~600km程度という距離は、北朝鮮から韓国の主要地域や在韓米軍関連施設などを射程に収めることが可能な範囲である。

したがって、今回のミサイルは米国本土を直接攻撃するための戦略兵器というより、朝鮮半島における軍事作戦を意識した短距離弾道ミサイルの能力を示すものと見ることができる。

防衛省も、北朝鮮が短距離弾道ミサイルなどを繰り返し発射し、関連技術や運用能力を急速に向上させようとしていると分析している。


2.最大のポイントは「発射のタイミング」である

今回の北朝鮮ミサイル発射を考えるうえで重要なのは、ミサイルそのものだけではない。

むしろ注目すべきなのは、なぜ9月20日だったのかという点である。

9月上旬には、米国、韓国、日本などが参加する軍事訓練が行われていた。

特に「フリーダム・エッジ」は9月7日から11日まで実施され、北朝鮮はこれを米国主導の軍事的圧力だとして批判していた。

そして9月12日、訓練終了の翌日に北朝鮮は複数の弾道ミサイルを発射した。

韓国の聯合ニュースは、この発射について、フリーダム・エッジに対する反発という性格があるとみられると報じている。

さらに9月17日には金与正氏が、米国主導の軍事演習について強く批判した。

その直後の9月20日に再びミサイルが発射された。

この流れを見ると、今回の発射には少なくとも米国、韓国、日本に対する軍事的シグナルが含まれていると考えるのが自然である。


3.狙いその1 米国に「北朝鮮を無視するな」と伝える

金正恩政権の最大の相手は、やはり米国である。

北朝鮮にとって韓国や日本は重要な安全保障上の相手だが、その背後には米国が存在する。

北朝鮮が核兵器や弾道ミサイルの開発を続ける理由の一つとして、防衛省は「体制維持・生存」のための核抑止力獲得を挙げている。さらに、通常戦力や戦術核を用いる可能性のある武力紛争に対応できる手段の獲得も狙いの一つと分析している。

ここから見えてくるのは、金正恩政権の基本的な発想である。

それは、

「軍事力を持たなければ、米国との交渉で相手にされない」

という考え方だ。

北朝鮮と米国の首脳外交は2018~2019年に大きく動いたが、2019年の米朝首脳会談以降、核問題をめぐる本格的な交渉は停滞している。

しかし北朝鮮にとって、米国との交渉そのものが消えたわけではない。

むしろ、軍事力を高めることで、

「北朝鮮を無視することはできない」

という状況を作ろうとしている可能性がある。

今回のミサイル発射も、その文脈で考える必要がある。


4.「米国が嫌いだから撃つ」だけでは説明できない

北朝鮮のミサイル発射を説明するとき、しばしば「米国への敵意」という言葉が使われる。

もちろん北朝鮮側は米国の軍事活動を強く批判している。

しかし、それだけではミサイル発射のすべてを説明できない。

外交において軍事力は、実際に戦争をするためだけに使われるわけではない。

軍事力を見せることで、

「自分たちにはこれだけの能力がある」

「圧力をかけても簡単には屈しない」

「交渉するなら北朝鮮の存在を認めなければならない」

というメッセージを送ることができる。

北朝鮮が核・ミサイル能力を高める背景には、こうした抑止と交渉力の両方が存在すると考えられる。

したがって、今回の発射も「戦争開始の準備」と単純に断定するより、軍事能力を外交カードとして使う行動という側面を見る必要がある。


5.狙いその2 韓国に対する軍事的メッセージ

次に重要なのが韓国である。

北朝鮮にとって韓国は、地理的にも政治的にも最も直接的な相手である。

今回のような短距離弾道ミサイルは、米国本土を狙う長距離弾道ミサイルとは意味が異なる。

短距離弾道ミサイルは、朝鮮半島周辺での軍事作戦を想定した兵器として重要である。

防衛省は、北朝鮮がSRBMなどについて、低空を変則的な軌道で飛翔する能力を含め、関連技術と運用能力を向上させていると分析している。さらに鉄道発射型や潜水艦発射型など、発射方式の多様化も進めているとしている。

これは韓国にとって非常に大きな問題となる。

なぜなら、ミサイルの性能が向上すればするほど、迎撃や防御が難しくなるからである。

北朝鮮からすれば、

「韓国が軍事力を増強するなら、こちらもさらに強力な兵器を開発する」

という軍拡競争の論理が働く。

その意味で、今回の発射は韓国に対して、

「北朝鮮のミサイル戦力を軽視するな」

というメッセージを送る意味も持つ。


6.狙いその3 米韓日の連携にくさびを打ち込みたい

もう一つ見逃せないのが、日米韓の安全保障協力である。

北朝鮮にとって、米国・韓国・日本が情報共有や共同訓練を強化することは、安全保障上の大きな圧力となる。

2026年9月には日米韓による「フリーダム・エッジ」が実施され、その直後に北朝鮮がミサイルを発射した。

北朝鮮はこうした軍事演習を「敵対的な行動」と位置づけている。

そしてミサイル発射によって、

「日米韓が軍事的に接近すれば、北朝鮮も軍事的に対応する」

という構図を作り出そうとしているとみられる。

これは単なる威嚇ではなく、相手側の政策決定にも影響を与えることを狙った行動と考えられる。


7.狙いその4 日本にも「北朝鮮問題は終わっていない」と示す

今回のミサイルは日本のEEZ外に落下したと推定されている。

だからといって、日本にとって無関係な出来事ではない。

日本政府は、今回の発射について、航空機や船舶への情報提供を行うなど警戒態勢を取った。また、防衛省は米国や韓国などと緊密に連携して情報収集・分析を進めている。

北朝鮮のミサイル開発が進めば、日本周辺の安全保障環境にも影響する。

特に北朝鮮は、短距離弾道ミサイルだけでなく、長距離弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルなど、発射手段の多様化を進めていると日本の防衛省は分析している。

つまり今回の発射は、

「北朝鮮のミサイル問題は依然として日本の安全保障問題でもある」

ことを改めて突きつける出来事なのである。


8.狙いその5 「核保有国」としての立場を既成事実化する

今回の発射を理解するうえで、核問題は避けて通れない。

北朝鮮は現在、自らを核兵器国として扱うよう国際社会に求める姿勢を強めている。

2026年9月には金与正氏が国際原子力機関(IAEA)の会議で出された非核化要求を拒否し、北朝鮮の核保有を既定路線とする立場を改めて示したとロイター通信が報じている。

これは極めて重要な変化である。

かつて北朝鮮問題の中心は、

「北朝鮮をどうやって非核化するか」

だった。

しかし現在の北朝鮮は、

「すでに核兵器を持っている国として交渉する」

という方向へ軸足を移している。

ミサイル発射を繰り返すことは、その核戦力を運搬する手段の開発・訓練にもつながる。

したがって、今回の発射は単なるミサイル実験ではなく、北朝鮮が核・ミサイル戦力を国家安全保障の中心に据えていることの再確認とも見ることができる。


9.狙いその6 ミサイルを「実戦で使える兵器」にする

ここは非常に重要なポイントである。

ミサイルは、単に飛ばせば完成するものではない。

実戦で使用するためには、

  • 発射準備
  • 発射命令
  • 指揮統制
  • 部隊間の通信
  • 発射地点の選択
  • 移動
  • 飛翔
  • 誘導
  • 複数発同時運用
  • 防空網突破
  • 発射後の再展開

など、複数の要素が必要になる。

つまり、ミサイル発射実験を繰り返すことで、兵器そのものだけでなく、兵器を運用する組織全体の能力を高めることができる。

9月には北朝鮮がミサイル、砲兵、ドローンを組み合わせた実弾射撃訓練を実施し、統合的な火力運用能力を示したとAP通信が報じている。

この点から考えると、金正恩政権が目指しているのは「ミサイルの本数を増やすこと」だけではない。

ミサイルを含む複数の兵器を連携させ、実戦的に運用できる軍隊を作ること

も大きな目標だと考えられる。


10.「大量発射」の意味

今回、短時間の間に複数のミサイルが発射されたことも注目される。

ミサイル防衛にとって厄介なのは、単発のミサイルだけではない。

複数のミサイルが同時または短時間に飛来すれば、防御側は対応すべき目標が増える。

さらに、ミサイルだけでなくドローン、巡航ミサイル、砲兵などを組み合わせれば、防空システムへの負担はさらに増大する。

9月の北朝鮮の実弾射撃訓練でも、ミサイル、砲兵、ドローンを組み合わせた訓練が行われたと報じられている。

このことから、北朝鮮が目指しているのは、単純な「一発必中型」の兵器体系だけではない可能性がある。

大量かつ複合的な攻撃を想定した能力の構築も進めていると考えられる。


11.金正恩は本当に戦争をしたいのか

ここは最も誤解されやすい部分である。

ミサイル発射を繰り返すからといって、直ちに「金正恩氏が戦争を始めようとしている」と結論づけることはできない。

むしろ、北朝鮮の体制維持という観点から考えると、全面戦争には非常に大きなリスクがある。

北朝鮮が韓国や米国と全面戦争になれば、政権そのものの存続が危うくなる可能性がある。

だからこそ、北朝鮮にとって合理的な戦略は、

戦争には至らない範囲で軍事的圧力を高めること

になりやすい。

ミサイル発射は、この「戦争と平時の中間」に位置する行動として非常に使いやすい。

発射すれば相手は警戒する。

しかし、海上に向けて発射すれば、直接的な攻撃を避けることもできる。

今回も日本政府によれば、1発目は日本のEEZ外に落下したと推定されている。

つまり、危険な行動ではあるが、全面戦争へ直結する行動とは区別して考える必要がある。


12.むしろ「ギリギリの線」を狙っている可能性

北朝鮮の行動には、ある種のパターンがある。

軍事的圧力をかける。

しかし、相手に全面的な軍事報復の口実を与えるところまでは踏み込まない。

このような「エスカレーション管理」は、北朝鮮外交を考えるうえで重要である。

もちろん、発射の意図を外部から正確に断定することはできない。

しかし、

「どこまでなら相手が軍事行動を取らないか」

を探りながら軍事活動を続けている可能性は考慮する必要がある。

今回もミサイルは海上へ向けて発射され、日本のEEZ外に落下したと日本側は分析している。

これは偶然という可能性もあるが、北朝鮮側が一定のリスク管理を行っている可能性も否定できない。


13.トランプ政権へのメッセージという側面

もう一つ重要なのが米国である。

2026年、米国のトランプ大統領は北朝鮮との外交関係を再び動かす可能性を模索している。

しかし、米朝間の交渉が進むためには、北朝鮮の核・ミサイル問題をどう扱うかが最大の問題になる。

北朝鮮側は、米国が北朝鮮を核保有国として扱わない限り、簡単には交渉に応じない姿勢を強めている。

一方、米国側にとっては北朝鮮の核保有を正式に認めることには重大な外交的意味がある。

このギャップは大きい。

そこで北朝鮮がミサイルを発射する。

すると米国は北朝鮮問題を無視できなくなる。

この意味でミサイル発射は、外交交渉のテーブルに自分たちを戻すための圧力手段という側面も持つ。


14.米韓合同演習をやめればミサイルは止まるのか

ここも単純にはいかない。

北朝鮮は米韓や日米韓の軍事演習をミサイル発射の理由として挙げている。

しかし、米韓側からすれば、北朝鮮の核・ミサイル開発が進むからこそ軍事演習が必要だという論理になる。

つまり、

北朝鮮がミサイルを発射する
↓
米韓が警戒を強める
↓
軍事演習を行う
↓
北朝鮮が「敵対行動だ」と反発する
↓
さらにミサイルを発射する

という安全保障上の悪循環が発生する。

この構造は「安全保障のジレンマ」と呼ばれる。

一方が自国を守るために軍事力を強化すると、相手には攻撃準備に見える。

そのため相手も軍事力を強化する。

結果として、双方が「防御のため」と考えている行動が、全体としては軍事的緊張を高めることになる。

朝鮮半島では、まさにこの構造が長年続いている。


15.ロシアとの関係も無視できない

現在の北朝鮮情勢を考える場合、ロシアとの関係も重要である。

2026年9月、北朝鮮の金正恩総書記はロシアのプーチン大統領からの建国78周年の祝電に返信し、両国関係の強固さをアピールしている。

北朝鮮とロシアの関係が深まることで、北朝鮮の外交環境は以前とは変化している。

従来、北朝鮮は中国との関係を重要な後ろ盾としてきた。

しかし現在はロシアとの関係も強化されている。

このことは、北朝鮮が米国や韓国から圧力を受けた場合の外交的選択肢を増やすことにつながる可能性がある。

もちろん、ロシアと北朝鮮の関係がどこまで軍事的・技術的協力につながっているかについては、個別の情報を慎重に検証する必要がある。

しかし、少なくとも外交的には、北朝鮮が以前より「孤立している」とは言い切れない状況になっている。


16.中国との関係も重要

北朝鮮にとって中国も重要な存在である。

北朝鮮経済は中国との関係から大きな影響を受ける。

一方、中国にとっても朝鮮半島の不安定化は望ましいとは限らない。

中国が北朝鮮にどの程度影響力を行使できるのかは議論が分かれるところだが、北朝鮮が中国とロシアの双方との関係を維持できれば、米韓からの圧力に対する外交的な余地は広がる。

そのため金正恩政権にとっては、

「米国と対立しているから完全に孤立する」

という構図を避けることが重要になる。

ミサイル開発と外交関係の強化を並行して進めることで、北朝鮮は自国の立場を高めようとしているとみられる。


17.国内向けの狙いもある

ミサイル発射には、外国だけでなく国内向けの意味もある。

北朝鮮の政治体制では、軍事力が国家の威信と結びついている。

特に米国や韓国と対峙するなかで、

「我が国は強い」

「外国から攻撃されても守れる」

というイメージを国民に示すことは、体制の正当性を支える要素になり得る。

北朝鮮国営メディアは軍事訓練や新兵器の映像を大々的に報じることがある。

これは外国への宣伝であると同時に、国内の国民に対する政治的メッセージでもある。

つまりミサイル発射は、

外交カードであると同時に、国内政治のカードでもある

ということになる。


18.「ミサイルを撃つこと」そのものが目的なのではない

ここまでを整理すると、重要なことが見えてくる。

金正恩政権にとって、ミサイル発射そのものが最終目的なのではない可能性が高い。

ミサイルは手段である。

その先にあるのは、

  • 体制の生存
  • 核抑止力の強化
  • 軍事的交渉力の向上
  • 米国への圧力
  • 韓国へのけん制
  • 日米韓協力への対抗
  • 国内向けの軍事力誇示
  • 国際社会における存在感の維持

などである。

日本の防衛省も、北朝鮮の核・ミサイル開発の背景として「体制維持・生存」を挙げている。

この視点は非常に重要である。

「金正恩は何を考えているのか」という問いに対し、個人的な心理を推測するよりも、北朝鮮という国家体制が何を必要としているのかを考えたほうが、行動を理解しやすい。


19.今回の発射で日本が特に注目すべき点

日本にとって今回のミサイル発射で重要なのは、単純な飛距離だけではない。

注目すべきは、

北朝鮮がどの程度の頻度でミサイルを発射し、どのような種類のミサイルを、どのような場所から、どのような方法で運用するようになっているか

である。

防衛省は北朝鮮が短距離弾道ミサイルだけでなく、鉄道発射型や潜水艦発射型など、発射方式の多様化を進めていると分析している。

発射地点が固定されていれば、監視や攻撃によって無力化することが比較的容易になる。

しかし、発射場所が分散し、移動式発射台や鉄道、潜水艦などが利用されれば、発射前にすべてを把握することは難しくなる。

つまり北朝鮮が目指しているのは、

「ミサイルを持つこと」から「簡単には破壊できないミサイル戦力を持つこと」への移行

だと見ることができる。


20.北朝鮮が核を簡単に手放さない理由

北朝鮮が核兵器を手放さない最大の理由の一つは、体制の安全保障である。

北朝鮮側から見れば、核兵器は米国による軍事介入を思いとどまらせるための最終的な保険になる。

実際、金正恩氏は過去の演説などで、核兵器を放棄しないとの立場を繰り返し示している。日本の防衛省も、北朝鮮が核兵器を国家の生存権や戦争抑止のための手段として位置づけていると説明している。

このため、北朝鮮に「核を放棄してください」と要求するだけでは問題は解決しにくい。

北朝鮮側には、

「核を放棄したら、体制を守るものがなくなる」

という認識があるからである。

ここに北朝鮮問題の難しさがある。


21.では、ミサイル発射は外交交渉を壊す行為なのか

一見すると矛盾している。

北朝鮮は米国との対話を求める一方で、ミサイルを発射する。

普通に考えれば、

「そんなことをしたら交渉できないではないか」

と思う。

しかし北朝鮮側からすれば、軍事力を強化したうえで交渉することに意味がある。

つまり、

「弱い状態で交渉する」

のではなく、

「強い軍事力を背景に交渉する」

という考え方である。

北朝鮮がミサイル発射を続けるのは、外交を捨てたからではなく、むしろ外交における自国の立場を強化するための行動という側面も考えられる。

もちろん、これが実際にどこまで成功するかは別問題である。

ミサイル発射を繰り返せば、国際的な制裁や警戒が強まり、逆に交渉の余地を狭める可能性もある。


22.国連制裁との関係

北朝鮮による弾道ミサイル発射は、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁決議との関係でも問題になる。

韓国側は今回の発射について、国連安保理決議に違反するものだとして非難している。

2017年に採択された安保理決議2397号などでも、北朝鮮による弾道ミサイル技術を使用した発射をめぐる禁止措置が確認されている。韓国の聯合ニュースも、今回の発射が関連する安保理決議に違反すると報じている。

しかし、ここでも北朝鮮側と国際社会の認識には大きな隔たりがある。

北朝鮮は自国のミサイル開発を「自衛権」の問題として主張する。

一方、米国、韓国、日本などは、核・ミサイル開発が地域の安全保障を脅かしているとみている。

この認識の差が、北朝鮮問題を難しくしている。


23.今回の発射から見える「金正恩外交」の特徴

今回の出来事を総合すると、金正恩政権の外交にはいくつかの特徴が見える。

第一は、軍事力と外交を切り離していないことである。

ミサイル開発は軍事政策であると同時に外交政策でもある。

第二は、米国を最終的な交渉相手として意識していることである。

第三は、韓国と日米韓協力を安全保障上の主要な対象としていることである。

第四は、核保有を既成事実化しようとしていることである。

第五は、ロシアや中国との関係を含め、外交的な孤立を回避しようとしていることである。

そして第六が、軍事力を実戦的に運用できるレベルへ引き上げようとしていることである。


24.最も警戒すべきなのは「ミサイル発射そのもの」だけではない

今回のニュースで「また北朝鮮がミサイルを撃った」と聞くと、どうしても発射回数だけに注目してしまう。

しかし、本当に重要なのは能力の変化である。

たとえば、

「どこからでも発射できる」

「短時間で複数発発射できる」

「低空・変則軌道で飛翔できる」

「複数の兵器を同時に使用できる」

「核弾頭を搭載できる可能性が高まる」

といった能力が組み合わされれば、同じ「短距離弾道ミサイル」でも意味は大きく変わる。

日本の防衛省が北朝鮮のSRBMについて、技術・運用能力の向上や発射方式の多様化を指摘しているのは、このためである。


25.今後、金正恩は何をする可能性があるのか

今後の北朝鮮の行動について断定的な予測をすることはできない。

ただし、今回の動きから考えると、今後注目すべきポイントは明確である。

第一は、追加のミサイル発射である。

北朝鮮は9月12日、9月20日と短期間に繰り返し発射している。

第二は、より高度な兵器の試験である。

短距離弾道ミサイルだけでなく、巡航ミサイル、固体燃料弾道ミサイル、潜水艦発射兵器、長距離弾道ミサイルなど、複数の兵器体系が対象になる可能性がある。

第三は、核関連活動である。

北朝鮮は核戦力の強化を国家戦略として位置づけているため、核物質生産や核兵器運用に関する動きも注目される。

第四は、米国との対話である。

ミサイル発射が続いても、北朝鮮が外交そのものを捨てるとは限らない。

むしろ軍事的圧力を高めながら、より有利な条件で対話を求める可能性も考えられる。


26.「金正恩は暴走している」と見るだけでは不十分

北朝鮮のミサイル発射は危険な行為である。

日本政府も今回の発射について、我が国、地域、国際社会の平和と安全を脅かすものであり、関連する安保理決議に違反するとして、北朝鮮に厳重に抗議している。

しかし、そこで「金正恩が暴走している」とだけ説明すると、問題の本質を見失う可能性がある。

重要なのは、

「なぜミサイルを撃つことが北朝鮮にとって合理的なのか」

を理解することである。

体制維持。

核抑止。

米国との交渉力。

韓国への軍事的圧力。

国内向けの威信。

ロシアや中国との外交関係。

これらが複雑に絡み合っている。

だからこそ、ミサイル発射は何度も繰り返される。


27.金正恩の狙いを一言で表すなら

今回の発射について、金正恩政権の意図を一言で表すなら、

「軍事力を背景に、北朝鮮の存在と要求を無視できない状態にすること」

と整理することができる。

もちろん、これは北朝鮮側が公式に「今回の発射の目的はこれだ」と明言した内容をそのまま引用したものではない。

あくまで、現在確認できる発射のタイミング、兵器の種類、北朝鮮側の声明、米韓日との軍事的緊張、核戦力強化の方針などを総合した分析である。

その点は明確にしておきたい。


28.北朝鮮問題は「ミサイルを撃つ・撃たない」だけでは解決しない

北朝鮮問題を考えるとき、ミサイル発射があれば非難し、発射がなければ安心するというだけでは不十分である。

重要なのは、北朝鮮がなぜ核・ミサイル開発を国家戦略の中心に置くのかを理解することである。

北朝鮮側には「米国から攻撃されないためには核兵器が必要」という論理がある。

米国や韓国、日本には「北朝鮮が核・ミサイルを持つほど安全保障環境が悪化する」という論理がある。

この二つの論理がぶつかっている。

そして双方が自分の行動を「防御」と考えている。

この構造を変えない限り、ミサイル発射は形を変えながら続く可能性がある。


29.日本にとって重要なのは冷静な情報分析

今回のミサイルは日本のEEZ外に落下したと推定されており、現時点で日本国内への被害は確認されていない。

しかし、北朝鮮のミサイル技術が進歩すれば、日本の安全保障環境に与える影響は大きくなる。

だからこそ重要なのは、過度に恐怖をあおることでも、逆に「また北朝鮮か」と軽視することでもない。

発射地点。

飛翔距離。

飛翔高度。

飛翔速度。

ミサイルの種類。

発射方式。

発射回数。

発射間隔。

北朝鮮側の声明。

米国・韓国・日本の対応。

これらを一つずつ確認することが重要である。


30.まとめ 金正恩は何を狙ってミサイルを撃ったのか

2026年9月20日の北朝鮮による弾道ミサイル発射は、単なる軍事訓練として片づけることはできない。

その背景には、複数の目的が存在すると考えられる。

第一に、米国への圧力である。

北朝鮮は、軍事力を高めることで米国との将来的な交渉における立場を強化しようとしている可能性がある。

第二に、韓国への軍事的けん制である。

短距離弾道ミサイルは朝鮮半島における軍事作戦と密接に関係しており、韓国や在韓米軍に対する攻撃能力を示す意味を持つ。

第三に、日米韓協力への対抗である。

2026年9月には日米韓の「フリーダム・エッジ」が実施され、その直後にも北朝鮮はミサイルを発射している。

第四に、核・ミサイル戦力の実戦化である。

日本の防衛省は、北朝鮮がSRBMなどの技術・運用能力を向上させ、発射方式の多様化を進めていると分析している。

第五に、体制維持である。

核とミサイルを「国家の生存」を保証するための抑止力として位置づける北朝鮮にとって、軍事力は政権存続そのものに関わる重要な要素である。

そして第六に、外交カードとしての利用である。

北朝鮮がミサイルを発射するたびに米国、韓国、日本は対応を迫られる。

つまり北朝鮮は、ミサイルによって「自分たちを無視できない状況」を作ることができる。

今回の発射だけから、金正恩氏が「戦争を始めたい」と断定することはできない。

むしろ現時点で確認できる行動からは、全面戦争そのものよりも、核・ミサイル能力を背景にして体制の生存を確保し、米国などとの外交交渉における影響力を高めることが大きな目的の一つと考えることができる。

しかし、ここには重大な危険もある。

軍事力を高めれば高めるほど、米韓日も警戒を強める。

米韓日が軍事演習を強化すれば、北朝鮮はさらに反発する。

そして北朝鮮が再びミサイルを撃つ。

この悪循環が続けば、双方が意図しない形で緊張がエスカレートする可能性がある。

したがって、今回のミサイル発射で本当に注目すべきなのは、「金正恩がまた撃った」という事実だけではない。

北朝鮮の核・ミサイル能力がどこまで進化しているのか。そして、その軍事力を外交カードとして北朝鮮がどのように利用しようとしているのか。

ここを見なければならない。

ミサイルは空を飛んで海に落ちる。

しかし、その一発が意味するものは、単なる数百kmの飛翔距離ではない。

米国、韓国、日本、中国、ロシアを巻き込む東アジアの安全保障環境そのものを動かす、一つの外交シグナルなのである。

今後、北朝鮮がさらにミサイル発射を続けるのか、それとも軍事的圧力を背景に米国との対話へ向かうのか。

そして米国、韓国、日本がどのような対応を取るのか。

ここが、今後の北朝鮮情勢を読み解く最大のポイントになる。

150x150px